大判例

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大阪高等裁判所 昭和28年(う)671号 判決

当裁判所は被告人の論旨に対する判断に先たち、職権で原判決の当否を案ずるに原判決は被告人の犯罪事実として第一及至第三事実を認定しているが、その判示第一に於て「被告人は法定の除外事由がないのに拘らず、昭和二十七年九月中旬頃から同年十二月末頃までの間に大阪市城東区長田町三一一番地丸山忠男方において同人の内縁の妻稲田君枝から第十回に亘り覚せい剤ヒロポン注射液二CC入アンプル十本及び覚せい剤ヒロポン注射液一CC入アンプル千五百本乃至五百本宛合計約六千本を譲り受けてこれを所持し」(判示第二に於ては同年九月中旬右丸山忠男方に於て右二CC入注射液十本の内一本を自己の身体に注射して使用し、判示第三に於ては右譲り受けた一CC入注射液約六千本を譲り受けの都度被告人方に於て他に譲り渡した事実を認定している)と認定し、これに対し覚せい剤取締法第十四条第一項(判示第一の所持の所為)第十七条第三項(判示第一の譲受けの所為し)第四十一条刑法第四十五条前段第四十七条本文第十条(判示第一の所持の罪の刑に法定加重)を適用しているのであつて、原判決は右覚せい剤の譲り受けの所為とその所持との別罪で併合罪の関係にあるものとしていることが明らかである。

しかし、右の判示では、原判決は被告人が覚せい剤取締法第十七条第三項に違反して覚せい剤を譲り受けた所為が他面に於て当然に同法第十四条第一項に違反して覚せい剤を所持したものに該当するとして判示したものと了解するの外ないが、原判決の趣旨とするところは恐らく譲り受けに基く占有の取得を所持と認定したものと思われるけれども、譲り受けの所為と所持の所為とを別個独立の所為として具体的に摘示したものと解することは到底できない。

元来同法第十七条の覚せい剤の譲り受けとは他人より覚せい剤の所有権を取得しその占有の移転を受くるをいい、一般に物の所持とは人がその実力支配下に物を保管する所為をいう(昭和二五、一〇、二六、最高裁第一小法廷判決集四巻一〇号二一九四頁)のであつて、同法第十四条の所持も亦同意義に解すべきものであるから譲り受けには当然に所持を伴うもので、所持を伴わない譲り受けはあり得ない訳である。然らば譲り受けに伴う当然の所持は譲り受けの所為中に包含せられ不法譲り受けの外別罪を構成しないものと解すべきである。(昭二五、三、三〇、最高裁第一小法廷判決集四巻三号四三七頁参照尚昭二五、七、一三、最高裁第一小法廷判決集四巻七号一三一九頁二六、二、二〇、第三小法廷判決集五巻三号四〇三頁は昭和二二年政令第一六五号第一条第一項の違反行為たる連合国占領軍の所有財産の不法収受と不法所持の所為を包括一罪としているが、仮りに本件の譲り受けと所持とを同一に解するとしても、原判決の如くこれを併合罪と解するは不法である)。

その別罪を構成するには、譲り受けに伴う所持がその態様を変化し、その形態が社会通念上客観的に別異な所持と区別し得る個別性を有するに至つた場合である。(所持の個別性については昭和二四、五、一八、最高裁大法廷判決集三巻六号七九六頁参照)。従つて譲り受けによりて所持を開始した覚せい剤を更に他人に売却する目的を以て、その買主を物色するため、譲り受けより異時別所に持ち歩く場合に於ては、新なる所持が生ずる場合が多いであろう。(昭和二六、四、一〇、最高裁第三小法廷判決集五巻五号八二九頁参照)。

以上の論拠に立つてみると、原判決は覚せい剤取締法第十七条第十四条の解釈を誤つた法令違反か、或いは被告人の所為に対し同法第十四条第一項第四十一条を適用しているけれども、これに該当する犯罪事実を摘示していない理由不備の違法がある。

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